今回は先日行われた学会で発表した珍しい腫瘍のフトアゴをご紹介します。
爬虫類の雌性生殖器疾患は卵巣原発が多く、卵管腫瘍は稀です。
過去の報告ではヘビで5例、トカゲで1例のみしかありません。いずれもすべて悪性の卵管腺癌です。
今回はその稀な卵管腫瘍の中でもさらに稀な2相性の示す卵管癌をご紹介します。
今回の子は腹部が腫れているという症状で来院しました。一般状態は特に問題ありませんでした。
超音波検査では右卵管部に大型の腫瘤が確認されたため、手術を行うことにしました。

こちらは開腹時の写真ですが、このように被膜に包まれた腫瘤が確認されました。周囲組織との癒着ありました。

被膜を切開するとこのように脆弱な組織が出てきます。
完全切除は困難と判断し、可能な限り腫瘍を切除し、閉腹しました。切除した腫瘍を病理検査に提出しました。
その後は麻酔からも覚め、特に問題なく、数日で自発採食もみられ、退院しました。
その後の経過は腫瘤内部の嚢胞液の増加はみられるものの、一般状態は問題ありませんでした。
病理検査の結果、卵管の原発腫瘍であることがわかりました。
もう一つ分かったことはこの腫瘍は2相性を持つ腫瘍ということです。
通常、腫瘍というのは母細胞が分化していくときに癌化します。基本的に1相性です。
この腫瘍は母細胞が分化していくときに2つの顔を持つようになっていきます。
つまり、1つの癌が2つの特徴をもっているというものです。
それぞれ腫瘍細胞Type1は卵白産生細胞に類似し、腫瘍細胞Type2は、卵管粘膜の粘液細胞に類似していました。
このような腫瘍は極めて稀な例であり、他の動物を含めても過去に報告はありません。
通常、卵管腺癌というのは転移を伴う悪性度の高い腫瘍ですが、今回の腫瘍は過去に報告がない、2相性の卵管癌であるため、どのように進んでいくかわかりません。
注意深く経過を追っていく必要があります。