卵巣捻転は爬虫類ではまれにみられる病気です。
過去にはレオパやグリーンイグアナなどで報告がありますが、フトアゴではありません。
今回はフトアゴでみられた卵巣捻転をご紹介します。

この子は急な食欲不振と元気消失で来院されました。
脱水がみられ、超音波検査では体腔内に液体の貯留と異常な卵胞の腫大が認められました。
経験的に卵巣捻転などの卵巣異常が疑われたため、調子が悪い状態でしたが、すぐに手術を行いました。
手術中は尾の静脈と骨髄から輸液を流していました。

お腹をあけると、お腹の中で多量の出血がみられ、卵巣の間膜にも血液の貯留がみられました。

お腹を探索すると、卵巣頚でねじれており、その影響で血管が破綻し出血したと考えられました。
出血量がこの子の体にすると致命的な量でしたので、お腹の中に出ていた血を採取し、抗凝固処理を行い、手術中に輸血を行いました。
捻転した卵巣を切除し、止血を行い閉腹しました。

手術自体はなんとか頑張ってくれました。オーナー様の他の子から輸血用の血を採取し、この子に輸血を行いましたが、状態は変わらず、残念ながら数日後に亡くなってしました。
卵巣捻転は論文でも予後が悪い報告が多く、緊急を要する疾患の一つです。
小さい爬虫類ならなおさら捻転が起こると、急激に全身状態の低下がみられます。特に女の子はこのような生殖器関連の病気が多く、フトアゴに関しては腫瘍や卵詰まり、卵胞うっ滞など様々です。
調子が悪そうな場合は様子を見ずに早めに来院してください。