今回はメンフクロウの肝細胞癌および鉄貯蔵病についてご紹介します。
この症例は2月9日(日)に行われた第28回鳥類臨床研究会で発表した症例になります。
簡単な概要をご紹介出来たらと思います。
まず、猛禽類では腫瘍の報告が多くありません。ハリスホークでは扁平上皮癌が多く報告されていますが、フクロウではあまりありません。
そのため、フクロウで腫瘍ができたときは稀なケースにはなります。

今回な子はメンフクロウでペリットがでていない、食欲も落ちているということで来院されました。
触診でお腹がかなり腫れていることがわかりました。

羽をかき分けるとこのような感じです。
レントゲン検査では肝臓が大きく、血液検査でも肝数値の上昇が認められました。
そのため、肝疾患の治療をおこなっていき、調子は良くなっていきましたが、お腹は変わらず張っている状態でした。
その後も調子は安定していましたが、お腹が大きくなっていくのが悪化し、亡くなってしまいました。
そのため、原因を調べるために死後にご遺体を検査させていただくことにしました。
その結果、肝臓に肝細胞癌という悪性の腫瘍が見つかり、肝臓は鉄貯蔵病も患っていました。
胆嚢という臓器も大きく腫大していました。
肝細胞癌はフクロウでの報告は過去に知る限りありません。肝臓の腫瘍は鳥類ではなかなか手術で取るというのが困難なため、一度なってしまうと難しいです。
鉄貯蔵病は肝臓に鉄が過剰に蓄積してしまうもので主にキュウカンチョウやヒインコなどの鳥種で代表的です。
猛禽類での報告はほとんどありません。原因も猛禽類ではわかっていません。
フクロウなどの猛禽類の医学はインコ・オウム・フィンチなどに比べると海外の文献でも多くありません。
まだまだ発展の段階にあります。
今回は死後に剖検をさせていただきはじめてわかりました。このようにデータが蓄積されていけば次同じような症状がでた子の治療やフクロウの医学の発展につながっていくと考えています。